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今、和菓子に必要なのは「発信力」。和菓子職人ユニット「wagashi asobi」

2011年10月02日

和菓子づくりにアトリエ? 

東急池上線「長原」駅の改札を出ると、そこに広がるのはどこか懐かしい感じのする商店街。1分ほど歩くと、小さなハーブガーデンのあるこぢんまりとした建物が目にとまります。そこが、「wagashi asobi」のアトリエです。

wagashi asobiとは、稲葉基大(いなば・もとひろ)さんと浅野理生(あさの・りお)さんの二人からなる和菓子職人ユニットのこと。

和菓子を作ってはそれを持って茶会やイベントなどへ遊びにでかけていたという稲葉さんと、美しい和菓子に魅せられ学生のころから「これを一生の仕事に」と決めていたという浅野さん。

日本人なら誰でもが知っている老舗和菓子店で働いていた二人は、「伝統的な技術を基に、より自由な発想で美味しい和菓子の魅力を広めたい」という共通の思いを持っていました。

2011年4月、和菓子店勤務とwagashi asobiとしての活動、その二足のわらじ状態に終止符がうたれます。独立し、自分たちだけの活動を本格的にはじめることにしたのです。


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大田区上池台のアトリエ


「いくら美味しいものを作っても発信しなければ広がらない。今の和菓子に必要なのはその発信力」

稲葉さんが、さまざまな遊びの場に持っていったというその和菓子は、ユニークな発想と美味しさでどこへいっても大評判でした。

通常、和菓子職人がお客さまの感想を見聞きする機会はほとんどありません。なので、お客様の反応をその場で体感できるという体験は、稲葉さんにとって大きな衝撃でした。自分が作ったものに対してお客さまがどういう反応をするのかを見届けることは、作り手としての責任だと感じたといいます。

次々とわき起こるスイーツブームの中で、和菓子が大きく取り上げられることはまだまだ少ないのが現状です。「いくら美味しいものを作っても発信しなければ広がらない。今の和菓子に必要なのはその発信力なんです」と稲葉さん。

独立するやいなや有名百貨店や高級スーパーから次々と声がかかりました。それはひとえに、彼らの織りなすお菓子の美しさと美味しさに一瞬で魅了されてしまうから・・・

和菓子という伝統の中に息づく斬新さや、「洋」の中に生きる「和」の希少性が見事に表現されていて、何より食べて美味しい! メディアや百貨店企画担当者がほうっておくはずがありません。

二人の手によりひとつひとつ丁寧に作るというそのプロセスは、どんなにスケジュールがタイトでも、大口の発注でも変わりません。そのまごころを感じるからこそ「また次もぜひ一緒に仕事をしたい」と思う人が増えていくのです。


基本となる二品(ふたしな)は、「ドライフルーツの羊羹(ようかん)」と「ハーブのらくがん」

イベントがある度に新しい和菓子が次々と生み出されますが、基本となる商品はふたつ。「ハーブのらくがん」と「ドライフルーツの羊羹(ようかん)」です。どちらも他では手に入らな いユニークなお菓子。「この二つをしっかりと作り続けていきたいんです」と浅野さん。

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「ドライフルーツの羊羹」

「ハーブのらくがん」は稲葉さんのこんな体験を基に誕生しました。「あるお店でチキンを食べたんです。その上にのっていたローズマリーを食べてみたらとても美味しくて!これをお菓子にできないかなとひらめいたんです」。

いろいろなお菓子で試すうち一番おいしかったのが「らくがん」でした。「あるお茶会に出したら、アロマセラピーの先生がいらして“他の ハーブ でもやってみたら?”とアドバイスをいただいて」。

今やその味は、カモミール、ハイビスカス、苺(いちご)、柚子(ゆず)、南高梅、抹茶、など、和菓子の枠を飛び越えて広がり、口の中でふわっと溶けるその食感とともに大人気の一品となっています。

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「ハーブのらくがん」


いっぽうの「ドライフルーツの羊羹」。「パンに合う和菓子を作って」という一見突拍子もないオーダーを受けたのは、アーティスト佐藤奈々子さん主催の、ひとつひとつに「詩がついたパン」と写真の展示「Poetic Bread(ポエティックブレッド)」でのこと。

「パンに合うのはどんな素材だろう」と、はじまった浅野さんの試行錯誤の日々。そして行き着いたのが黒砂糖とドライフルーツだったのです。

断面にあらわれるドライフルーツの美しさもさることながら、クリームチーズと合わせ、パンにのせていただくと絶品! こんな和菓子の食べ方があったなんて本当に驚き。贈り物やお客様のおもてなしにぴったりと、こちらも大人気商品となっています。


「和菓子にできることはもっとあるはず。その可能性を探りながら広めていきたい」

「和菓子にできること、伝えられること、生まれる何かがあるのなら、その可能性を探っていきたい。いろいろな人に関わったり、何かの役になったり、コミュニケーションの手段になったり、和菓子にできることはもっとたくさんあるのではないか」。稲葉さんがそう感じるようになったきっかけがありました。

高尾山の環境保護をテーマとしたお茶会に参加したときのこと。環境保護の話などは一切せずに、高尾山の水とよもぎで作ったお菓子を、同じく高尾山の美味しい水でいれたお茶と一緒に召し上がっていただきました。

そうすると、こんなに豊かな自然があるところなんだな、とお客様の関心は高尾山にむきます。この体験が基になり、参加者はさまざまなメディアで高尾山にふれるたび、その豊かな自然を思い出すようになるかもしれません。

「こんなふうに、和菓子にできることはもっとあるのではないか?その可能性を探っていきたい」。この会を通してそう考えるようになったといいます。


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和菓子づくりに使用する道具


wagashi asobiの活動はアトリエのある地域にも密着しています。例えば、近所の小学校で行われる「和菓子づくり体験」。和菓子になじみがなくても、手作りで無添加の美味しいお菓子なら子どもたちは喜んで食べるそうです。子供たちを通して次世代にも「和菓子を伝えていく」のが浅野さんの抱く夢です。

大勢の人が集まりメディアからも注目される華やかなイベントに参加する。長原の小さなアトリエで地域の人々と交流しながら日々和菓子を作り続ける。彼らを取り巻くさまざまな世界と「wagashi」で「asobi」ながらもそれらを貫く「軸」が確かにあります。

和菓子店勤務時代、N.Y.に6年間在住しその後パリにも滞在した経験をもつ稲葉さん。見据えているのは世界でしょうか。「でも拠点は日本。フランス料理はフランス。 イタリア料理はイタリアですから(笑)」。

海外で学んだ有名パティシエが日本に存在するように、wagashi asobiに続く和菓子職人が世界各国に存在するようになる日はそう遠くないかもしれません。「目標は世界ですか?」そんな投げかけに、「遊びで行けたらいいな〜 (笑)。目標は、現状維持です。小さいですか?(笑) 」と答えた二人。

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アトリエの前で。左が浅野さん。右が稲葉さん。

この秋も「wagashi asobi」が参加するイベントがあります。守るべき美しい日本の文化を発信し続ける彼らの作品を、目で舌で味わってみるのはいかがですか?

(梶原上記子)


■wagashi asobi atelier(アトリエ)
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〒145-0064 東京都大田区上池台1-31-1-101 地図
tel&fax 03-3748-3539
<アクセス> 東急池上線「長原」駅 徒歩1分
改札を出て左・つきあたりを右・80m進んだ左側の駐輪場手前。小さなハーブガーデンが目印。 

<定休日> 不定休(イベント等で不在の時があります。ご来店の際は事前にお問い合わせ下さい。)
http://wagashiasobi.wordpress.com/


■イベントのお知らせ
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wagashi asobiのお菓子が展示販売されます。

・ エスプレッソにチョコとウツワ 
<期間>10月2日(日)〜10月16日(日) 
<場所> LIFE kitasando 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-30-9 Modelia Brut Kitasando 101
詳細はコチラ


・ 現代茶ノ湯スタイル展 「縁(えにし)」
<期間> 10月4日(火)~10月24日(月) 
<場所> 西武渋谷店 B館8階オルタナティブスペース/B館8階ギフトギャラリー
B館5階ネクストスペース/A館地下1館 西武食品館
<詳細お問合せ>: B館8階 美術画廊 tel:03-3462-3485
詳細はコチラ

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