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目に触れる印刷物すべてが愛おしい!

2011年12月20日

今や、工場見学はちょっとしたブーム。
テレビでも工場での物づくりの様子などが放映され、工場見学の予約はどこも満員状態とか。
身近にある本や雑誌がどんな風に作られているのか? ワクワクしながら印刷工場に行ってきました。

伺ったのは株式会社平河工業社小竹事業所。
「文化の根源は文字にある」を信念に創業61年の平河工業社は、ドイツ・ハイデルベルグ社製オフセット印刷機を100台以上も有している世界でも数少ない企業です。

「印刷工場見学」というと、インクの匂い漂う工場内をちょっと頑固そうな? 職人気質の工場長が案内してくれる、そんなイメージだったのですが、キレイなオフィスビル、そしてスーツをパリッと着こなした営業の方々が、さわやかな笑顔で出迎えてくれました。

まずは企画営業課の梅原直樹さんから1時間ほど印刷に関するレクチャー。
印刷技術、コスト、営業力、お客様の求めるものに全力で応えようとする企業ポリシーが伝わってくる熱い講義でした。
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(ドイツ・ハイデルベルグ社製オフセット印刷機)

その後いよいよ工場見学。外部からのほこりを工場内に持ち込まないようにするために、靴カバーが配られました。まるで食品会社みたい。
工場内は常に湿度60%・温度25℃に保たれているそうです。
これは静電気などにより、印刷用紙が2枚同時に送られることを防ぐため。
出来上がった本に白紙のページが交じっている! なんてことがあったら大変ですから。
工場内はきちんと整頓され、常にベストコンディションであるよう配慮されていました。

特に印象に残ったのは、こちら。
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SM102 8P(菊全8色機)

印刷は、色料の3原色(シアン、マゼンタ、イエロー)+ブラックの4色で全ての色を表現。
16年前に開発されたこのハイデルベルグ社製印刷機は、8つの装置それぞれに1色ずつインクがセットされており、最初の4色で表面を、次の4色で裏面を、つまりこの印刷機に紙を入れれば表裏両面を自動で印刷してくれるというものです。
それまでは表面を印刷して乾かしてから、また裏面を印刷する、という流れでしたが、
この機械の出現によってその手間がなくなったのです。
「これは業界ではかなり画期的なことだった」と、梅原さんは興奮気味に説明してくれました。

実際にこの機械を上から覗かせてもらったら、私が見た部分は「イエロー」のインクが入っていました。それぞれの色がずれることなく文字や、写真などになり、一枚の紙面として出てくる……。
この印刷機から両面きれいに仕上がった印刷物が出てきたとき、思わず拍手してしまいました。

工場内に設置された、たくさんの印刷機、コンピューター。印刷技術は最新でも検版(印刷ミス等のチェック)は人の手と目で行われています。
複数のスタッフが、一心に印刷物をめくって隅々までチェック。
その真剣な眼差し、素晴らしい手さばき!
技術が進歩しても、こうしたチェックは、機械より人間の方が正確とのこと。
機械が出来ること、人間にしか出来ないこと、それぞれの役割を果たしてクオリティの高い印刷物が仕上がるのですね。

工場見学後、「製本」の話を聞きました。
一口に「製本」といっても、パンフレットのような薄いものから、図鑑のような厚いものまで、それぞれに適した手法で作られています。その工程を図で解説いただきましたが、一冊の本ができるまでにどれほどの手間がかけられていることか!
 
例えばハードカバーの本。中身を貼り合せ、背をかがり糊で固定、本の背以外の三方を裁ち、本を開きやすくする加工を施し、さらに表紙をつけ……。
こうした工程を経て出来上がる一冊の本。大量生産品ではあるけれど、不思議と手作りのようなこだわりを感じます。

一つの情報を多くの人に等しく伝える印刷の技術。
後世にまで残る“紙”という媒体。
そして、さらによりよい印刷を! と熱意を持って携わる人々。
こうして生み出される1冊の本や印刷物。

なんだか目に触れる印刷物すべてが愛おしく思えてきます。
インターネットや電子書籍は、大量の情報を手軽に入手できるという点では便利です。
しかし、印刷物には、情報以上の“なにか”を感じさせてくれるチカラがあるのでは? 
そんな風に思わせてくれた工場見学でした。

◆株式会社平河工業社
http://www.hirakawa-kogyosha.co.jp/
(鷲見由生子)

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