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この場所を守れるか。アトリエ・アルケミストの挑戦

2019年03月08日

東京都町田市にある小さな絵画教室が、クラウドファンディングに挑戦中だ。

アトリエ・アルケミストの守りたいものは何か。主宰の羽田由樹子先生に聞いた。

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アトリエ・アルケミストの制作風景

 アトリエ・アルケミストは、小学1年生から大人までを対象とした絵画教室だ。

月・水・木・土曜に開講し、現在は50人弱が通う。社会人になってから「やっぱり絵を描きたい」と通い始める人や、学校の友達つながりで入った子供、親の意向で来る子供もいる。

教えるのは羽田先生ほか数名の先生で、アクリル・水彩・油彩・デッサンなど絵画や、木工・工作・粘土など幅広い。

決まったカリキュラムはなく、その人が興味を持っていることを対話によって引き出し、その人のペースで取り組めるオーダーメードのカリキュラムを組んでいくスタイルだ。(月謝:大人1万円、高校生9000円、中学生以下8000円)

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各自好きな制作に取り組む

 先生達は、根を詰め過ぎている人には休憩を呼びかけたり、制作に行き詰っている人には明るく話しかけて肩の力を抜いたり、細やかに気を配る。

描き方を押し付けるようなことはしない。その人自身が自分のスタイルを模索する時間をとりつつ、タイミングをみて、そのとき必要なアドバイスをしていく。

ときには、いつも絵を描いている人に「たまには針金でモチーフ作ってみませんか」など全く違うジャンルの提案をすることもある。息抜きや刺激になり、興味の幅を広げることにもつながるためだ。

つかず離れずの距離感で生徒一人ひとりを見守る目線は温かい。多様な生徒にタイムリーに提案するための準備など、重ねてきた工夫は数えきれない。

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何気ない団らんも大切にしている

 羽田先生はデザインと教育学を専門に学び、4年間、大学で美術教員を勤めた。
その後アトリエ・アルケミストを開いて19年が経つ。

アルケミストとは、錬金術師を指す。大切なことや大好きなことに出会ったとき、人は金のように輝くという意味を込めた名前だ。「心からやりたいことに集中して描いているときの、人の顔は美しい。」その顔を見るのが好きでたまらないのだと、羽田先生は目を細める。

「教員時代に、大学に入ってから違う分野が好きだったと気付いて、でも専攻を変えられず後悔する学生を何人も見ました。もっと早くに自分の好きなことに出会っていれば、違う道を選べていたかも知れないって思ったんです。」小さい頃からなるべくいろいろなアートに触れさせてあげたい、と子供の美術教育をライフワークに決めた。今は、私立の中学校とアトリエ・アルケミストで、一週間に200人ほどの子供達を教えている。

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アトリエの庭で子供に話しかける羽田先生「フキノノウが出たよ」

身体をうまく使えない子供が増えている?
 
羽田先生が心配しているのは、子供の身体の変化だ。
はさみを使う、輪ゴムでしばる、など普通の日常的動作をうまくできない子供が、この7~8年で増えてきたという。簡単なことができず、教えてよ!とキレる子供もいる。
 「何度も丁寧に教えれば、できるようになります。練習が足りていないだけで、経験すればできるんです」

今の時代は、液晶パネルを操作するだけの遊びが増えた分、感覚や身体を使う場面が減った。

制作することで、全身の感覚を使う楽しさを知ることができる。手先を使う経験も積める。身体を使う大切さを伝えたいと、羽田先生はアトリエ内外でアートや感覚に関するワークショップを開催する。

「今後はアートワークショップをするNPOを設立し、もっと多くの人に体験の場を広げていきたい。」人とアートへの情熱があふれる。

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アトリエ内で日本画体験ワークショップ 2019.3.2

人との関わり方がわからない子供も増えている、と羽田先生は危惧する。

自分の話ばかりして話を聞けない子供は、身体をうまく使えないことも多いという。

「そんな子供達も、アトリエに来て皆で絵を描いたり工作したり、2~3年も経てば身体を使えるようになってきます。自分から人に声をかけるようになれば、自然に相手の話も聞けるようになってきます」

子供が人との距離感を学ぶには、環境も大きく関係している。

アトリエ・アルケミストには、静かに集中したい人向けの小部屋もあるが、多くは大部屋で制作する。友達とおしゃべりしながら工作する小学生たちの傍らで、黙々と油絵を描く社会人。

それぞれ別なことをしながら、何となくお互いの気配を感じる場は、人との距離感が希薄な現代社会において貴重だ。
子供が何を面白がっているのか、笑い声やおしゃべりが耳に入ってくる。大人の立ち居振る舞いが目に入ってくる。

年代や住むところがさまざまな人々が、一つ屋根の下で毎週会って過ごすうちに、いつの間にかお互いに馴染んで、緊張が解けていく。
リラックスすることは、のびのびと制作できる要素であり、落ち着いて相手に向かい合うことにもつながる。

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子供を見つめる羽田先生のまなざしは優しい

アトリエ・アルケミストは、19年かけて少しずつ、樹の年輪のように育まれてきた。

卒業生が数年ぶりにふらりとやって来ることも珍しくはなく、多くの人が慣れ親しんだ場であることがうかがえる。

しかし、ここを基盤に今後も活動していこうとしていた矢先、この土地建物を買い取るか、立ち退くか、の決断をしなくてはならない状況になった。

皆がのびのびと親密に制作できる場であり、拠り所として戻って来てくれる人がほっとできる場であるために、変わらないアトリエでいたい。アトリエ・アルケミストは土地建物の買い取り資金の調達をめざし、クラウドファンディングに挑戦している。

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玉川学園の丘に建つアトリエ

アトリエ・アルケミスト
〒194-0041 東京都町田市玉川学園8-3-18
◆クラウドファンディング 2019年3月31日23:59まで
https://a-port.asahi.com/projects/atelier-alchemist/
◆フェイスブック
https://goo.gl/whJKB3
◆インスタグラム
https://www.instagram.com/a_alchemist/

(23期菊田友子)

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