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ソーシャルメディア時代の世界報道写真展 ―プレスプレビューに参加して―

2019年06月14日

 オランダ人のカメラマンたちが自らの写真を国際的に発表することを目的に世界報道写真財団は1955年に発足。今年で62回目を数える世界報道写真展が東京恵比寿の東京都写真美術館で開催中です。
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世界報道写真大賞 「スポットニュースの部 単写真1位」 ジョン・ムーア(アメリカ、ゲッティイメージズ)
 
 

 世界中約100会場を巡回する大規模な写真展は、4738人の写真家、フォトジャーナリストから7万8801点の応募があり、選ばれた43人約160点の入賞作品が一堂に展示されています。

 メディアで働くプロであればだれでも応募できるこのコンテストは「現代社会の問題」「一般ニュース」「自然」「環境」等全8部門から成り、各部門の中から最もすぐれた作品に、「世界報道写真大賞」と「世界報道写真ストーリー大賞」(今年創設)が贈られます。

 一般公開に先立ちプレスプレビューが開催されました。

 財団のあるアムステルダムから来日したコンテスト・マネージャー、アナ・レイナ・ミール氏よりコンテストの概要、作品解説がギャラリートークの形式で行われました。

 財団の簡単な紹介に続いて、審査の説明がありました。17人の審査員は多様性に配慮されています。
 世界各地域から選出され、写真家、編集者、キュレーターなど様々なバックグランドを持ち、男女比はほぼ同数。公平な選考のために撮影者の名前、出身国、性別は伏せられ、作品自体とキャプションのみが知らされます。

 最終的な段階で、ファクトチェック、加工の有無の確認と、受賞作品に写された内容についての説明が求められます。これらの段階を経て各賞が決定、発表されるのです。

 今年フォーカスされたテーマは「移民」と「環境」。「移民」は数年にわたりこの写真展で数多く展示されてきましたが、今年はアメリカ、メキシコ国境間で撮影されたものに焦点が当てられました。「環境」に関しては、ソリューション・ジャーナリズム型の作品が大きく評価されています(注)。

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「自然の部 単写真第2位」 ヤスパー・ドゥースト(オランダ)
オランダ領キュラソーでひどいけがを負って足に急ごしらえの治療用ソックスを履かせられたベニイロフラミンゴ

 「大賞」にはアメリカ・メキシコ国境沿いでホンジュラスからやってきた親子を捉えたジョン・ムーアの作品が選ばれました。

 母親が国境監視員の取り調べを受けて大泣きする子ども。トランプ政権の移民に対する不寛容政策により、不法入国した親子が分離され収容施設に送られたことが強く非難されていました(この親子は実際には分離収容されていないことが判明しています)。

 写真が公表されると瞬く間にSNSで広がり、トランプ政権への大きな圧力になったということです。直接的な影響は計りしれませんが、公表10日後には分離政策が撤回されました。

 「ストーリー大賞」もやはりアメリカを目指す移民を撮影したピーター・テン・ホーペンの組写真です。
 キャラバンを組んだ移民の実生活を伝えるスロージャーナリズムの好例です。数週間かけて取材しました。スポットニュースでは伝えきれない背後の事象を明らかにしています。

 スマホが普及しSNSが発達した現代では誰もが情報発信することができます。だからこそ単にスピーディ、センセーショナルで表層的な報道に惑わされていないか自らに問いかける必要性を感じます。国際的な規模で政治、社会、自然、環境問題、報道の自由を考えるだけでなく、改めてジャーナリズムの覚悟に気付かされる写真展です。

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ギャラリートークの模様。作品「自然の部 組写真第2位 ヤスパー・ドゥースト(オランダ)」を解説する財団コンテスト・マネージャー アナ・レイナ・ミール氏

(注・ソリューション・ジャーナリズム―問題を提示するだけでなくどうやって解決策を導き出すのかを示す報道。「環境の部」で入選したブレント・スタートンの作品には密漁された動物も破壊された自然も写っていません。被写体の反密漁武装部隊の隊員は地元住民と協力して環境保全を目指す新しい自然保護モデルを例示しています)

世界報道写真展2019
会場・東京都写真美術館(東京・恵比寿ガーデンプレイス内)
開館時間:10:00~18:00(木・金は20:00、詳細はHP)
休館日:毎週月曜日(7月15日[月・祝]開館、翌16日[火]休館)
観覧料:一般800円、学生600円、中学・高校生400円詳細はHP
会期:2019年8月4日(日)まで
HP: http://www.asahi.com/event/wpph/

                             (20期 高瀬嘉代)

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