娘が肘を骨折したので、毎週末、通院している。
腕を吊っている娘を見て、待合室で隣に座った60過ぎの女性が話しかけてきた。
「骨折したの?」
娘ははにかんで頷くだけなので
「はい。春休み最後の日に」と私が答えた。
「うちもよ。うちは夏休みだったの。どこにも出かけられないし、不自由だしねぇ~」
お孫さんの話しかと思って聞いていたが
「もう、50になる娘なんでけどね。かわいそうだったわよ…」
と、まるでつい最近のことのようにその女性は話すのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まだ娘がベビーカーに乗っていたころ、
スーパーで腰の曲がったおばあさんが近寄って来て…
「かわいいねぇ」と話かけて来た。
「思い出すわぁ~」と、本当にしみじみ思い出している様子のおばあさんに
「お孫さんのことですか?」と言うと
「いや、娘のことよ。
育児に追われて、自分のことなんて何もできなくてね…
やっと手が離れたのが40のとき。
さぁ、これから自分の人生を生きるぞ!と思っていたら
アッという間に50になり、60になり、今になったのよ」と。
その言葉がチクリと私に刺さった。
まるで魔法使いのおばあさんの糸車だったか、
なんだったかの針に指を刺してしまった眠り姫のように、
「すぐに老いるぞ」と呪いをかけられてしまったような気がした。
魔女の手下がここにもいた!と待合室で思った。
あいはら こずえ
