帰宅が遅くなったので、慌てて夕食の支度をしていると電話が鳴った。
「バァバから」
受話器をとった娘が言った。
「うん。うん。そう…。
ネクタイの色とかね、お洋服の色とかね言うの。
…え、わからない。ご飯の支度している。…まだ食べていない。
わかった。お姉ちゃんにかわる」
夫のサミット・ファッションチェックのことを話しているようだ。
夫ったら、新聞に載ったことを、お義母さんに電話したようだ。
「うん。そう…。オンナの人…記者から電話があって…シャツの色とか言ってた。
新聞?うん、あるよ」
小4の上の娘が電話を肩にはさみ、新聞をめくる。
え?新聞に記載されたの知っていたのだろうか?
え?あんな新聞、見ちゃったのぉ~?
…と思ってるやいなや
「うわっ!エロい!なにこれ」娘が叫ぶ。
フライパンから手が離せないのをいいことに聞こえないふりをする。
しかし、娘の興味の先は夫の記事。パラパラと新聞めくり
「あった、あった!〇ページ。G8クビノウ…?え?」
電話口で一生懸命説明しているが、伝わらないようだ。
焼きそばができたので火を止め、電話をかわった。
「新聞を買ったんだけど、どこに載っているかわからないんだよ」
いつの間にかお義父さんにかわっていた。
「ちょうど、福田首相の下から文が始まっているのわかります?
“北海道洞爺湖サミットが開幕した。…G8の服装をファッションコーディネーターあいはら氏が採点”」
記事を読み上げるそばから、
「うわぁ~おとうさん、すごぉい!!」娘たちの喚声が上がる。
どうやら新聞は見ていなかったようだ。
電話を切った後の食卓も
「おとうさんってすごいんだね!学校で自慢しちゃおう!」と盛り上がる娘たち。
なんとなく、悔しくなり
「でもさ、おかあさんがほとんど書いてあげたの見てたでしょ?」と大人げもなく言うと
「え?でもおかあさんの名前なかったでしょ」と冷たくあしらわれた。
「でもさ、でもさ、おかあさんもさ、本に載ったでしょ?写真入りで」
と引き下がらずに“Shufdas”のことを持ち出すと…
「…え?新聞の方がすごいに決まってるじゃん。たくさんの人が読むんだよ」
きびしぃ~っ!(涙)
娘の返答に返す言葉もなく、軽い敗北感をむさぼった焼きそばと一緒にビールで流し込んだ。
あいはらこずえ
