4月18日、招待で西新井文化ホールで行われた『春風亭小朝独演会2010』に行ってきました。
前座は小朝さんのお弟子さんの春風亭ぽっぽさん。“平和の日”に入門したため“ぽっぽ”になったと枕で自己紹介。今では女性の噺家さんも珍しくはないようですが、私は初めてでとても新鮮でした。これからどんな風に化けるのかしら?…とエールを送りつつ、真打の登場に胸が躍ります。
そしていよいよ貫禄たっぷりで登場した小朝さん。パッと見た瞬間、私は「アチャー、そうだ、この人は金髪だったんだ。これで落語をやるの? なんかしらけそうだな…」と小さなガッカリ。でも数分後、そんな不安は吹っ飛びました。気が付けば、小朝ワールドにどっぷりはまり、私は大爆笑&素敵な感動に浸っておりました。
高座では古典2席と創作1席を披露。中でも創作落語の「越路吹雪物語」は、コーちゃんこと越路吹雪さんと、ダンナさまの内藤法美さんの愛情溢れる物語。小朝節でユーモアのスパイスをところどころにきかせながら展開していきます。そしてクライマックスに近づくにつれ、さっきまで大笑いしていた観客が、コーチャン夫妻の優しい思いやりに涙、涙、涙。もちろん私もタオルが手放せない状態です。最後に流れる「愛の賛歌」がいつも聞くのとはまったく違う歌に聞こえてくるから不思議です。
テレビ大好きなヘビーウォッチャーの私。でもドラマでここまで感動することは滅多にありません。なぜ落語はこんなにも心を揺さぶるの?
私なりに考えてみたところ、ドラマは俳優さん、女優さんが生身で演じてストーリーが進んでいくので、どんなに物語の中に入っていたとしても、どこかで「フィクションなんだよな…」と言う冷静な私がいるような気がします。
しかし落語は頭の中にコーちゃんと内藤さんが出てきて、動き始めるのです。それも小説とは違い、小朝さんの語りが、上手に登場人物とクロスして。だからよりリアルで感情移入がしやすい…のではないでしょうか。
そして気がつけば、耳や目だけでなく、頭の細胞はもちろん、雰囲気や匂いを感じとる嗅覚、演者と間を合わせる呼吸などなど、体のどの部分もフルに回転しているのです。その集中力は、他のメディアでは絶対にありえないぐらいのすごさです。だから私は幕が閉まるまで、物語の中にいたことも忘れていました。
終わったあとは現実にフッと引き戻されるのですが、落語の余韻と心地良い疲れが体の中をフワフワと漂い、いつまでも消えないのです。これが落語の醍醐味なのでしょうか。
高座もいよいよお開き。その時、既に私の前から落語家・春風亭小朝の姿は完全に見えませんでした。名人芸とは、話しがうまいとかではなく、自分の存在をいかに消せるかだと言う気がします。そして小朝さんの金髪は、落語家としての自信の裏打ちなんだなーとも。
小さな雷に打たれた気分の私は、現実と虚構をいったりきたりしながら、西新井の駅まで歩きました。
元妻の発言で話題になった”金髪”の噺家・春風亭小朝。しかし彼の金髪はワイドショーネタだけで終わるのはもったいない! この髪型は春風亭小朝の落語家としての誇りです。
(3期 うさどん)
