家へ向かう電車に乗ったとき、車内へと足を踏み入れた先に葉っぱが落ちていた。
おやこれは、と思って拾い、一緒にいた4歳の娘に見せてあげた。
「見てごらん、四つ葉のクローバーだよ」。
小さいけれど、ちゃんと葉が4枚ついているクローバーだった。
「葉っぱが4枚あるのは、とっても珍しいんだよ」。
それは、草むらでちぎって放置した、しなびたクローバーではなく
なにかで大事に挟んだような、「押し花」状態で形を残していた。
「きっと誰かが大切にしていたものだろうね」。
電車は動き出した。
そのまま捨てるには、あまりにもか弱い存在でもったいなく
とりあえず電車を降りたら駅員さんに相談することにした。
「あの…これ、落とし物なのですが、四つ葉のクローバー。
押し花のようで、とても大事にされてたみたいで…どうしたらいいでしょうか?」
と聞いたら
「いやー…今のところ問い合わせがないから、もう、いいと思いますけど…」
と返された。預かる意志がまったくない口調だった。
国際結婚した知人が、夫婦で九州旅行をしたとき
アメリカ人のご主人が電車内にサングラスを忘れてしまい、諦めつつも駅に電話すると
誰かが見つけてちゃんと駅に預けていてくれたことに、ご主人がいたく感動した、
という話を聞いたことがある。『アメリカだったら絶対盗まれている!』と。
駅員さんに「もらえばいいのにー」と娘が言った。
『駅で預かってくれれば、落とし主が頼れるのに』という意味だった。
幸せを運んでくれるという、四つ葉のクローバー。
持ち主がお守り代わりにしていたら…、恋人からもらった大事なものだったら…
などと考えると、おいそれと『ラッキー、もらっちゃおう!』と思えない。
「そうだね、もう誰のか分からないから、今度は私たちが大事にしてあげようね」。
娘と話しながら帰った。
(0期:マツムラま)
